全体講評
《生徒講評委員会》
最初に、今回の中部大会の特徴を3つにまとめ、それについて講評委員から出た意見を紹介します。
まず、親子の関係や友達同士の関係を考えさせる劇がありました。
吉城高校の「わらし…な日曜日」は、親子の絆を改めて感じさせる劇でした。舞台セットがとても細かく作られ、照明・音響があまり使われていないことが、日常的を演出するのに効果的でした。
小松高校の「海へ−DOLLより−」は、五つに分かれた平台の上にある部屋を照明が区切り、見やすい舞台にしていました。ネット上での友情を扱っていましたが、五人には強いつながりを感じ、「生きようという」と決意を固めたシーンがとても印象的でした。
藤ノ花女子高校の「きらきら」では、照明や音響、スモークを効果的に使っており神秘的な舞台に仕上がっていました。高校生での妊娠・中絶やDVの問題や、親子の愛情について考えさせられる劇でした。
緑高校の「ベイビー*フェイス」はキャストが年相応に演じられていて違和感なく観ることができました。完成度が高く、夫婦の関係や親子のあたたかい関係を観てとても感動しました。
桑名西高校の「たんぽぽん」では、黒い舞台装置から劇の重々しさを感じました。最初の明るいノリの良い雰囲気とシリアスな雰囲気のギャップが三人の友情の切なさをひきたたせていました。
富山高専の「夏芙蓉」では、千鶴とは違う世界に行ってしまうという三人の、光を求めているような動きが神秘的で美しさを感じました。
次に、観ている観客をひきつけるための工夫がよくなされている劇がありました。
金沢辰巳丘高校の「amour ou argent」では、役者ひとりひとりが生き生きと演技しており、観客を楽しませていました。衣装にこだわりも感じました。
東海学園高校の「田舎一人舞台」では、客席で演技をするなど観客との一体感が得られる斬新な演出がされていました。また、役者の演技力が高く、すべての年代を演じきっていたのに驚きを感じました。
呉羽高校の「ごはんの時間2ぃ」では、役者のキャラがたっていて、テンポがよく目が離せない劇でした。役者の間の取り方などで自然に笑えるところがあり、観客を劇にひきつけていました。
高田高校の「マスク」では、大勢の役者が台詞や演技力で異様な雰囲気を作り出し、集団心理というものの恐ろしさを感じました。最後、アケミがマスクをつけようとする場面は、観客の神経のすべてをひきつけていました。
池田高校の「きらわれたガール」では、役者のダンスと照明・音響のタイミングがとても良く、観客を楽しませていました。最後のナナミのすっきりとした笑顔が印象的で、観ていて元気になったという意見がとても多かったです。
恵那高校の「左様然らば」は、登場人物の見せ方がうまく、それぞれの役割がしっかりしていました。また、動きや台詞回しなどで観客の笑いを誘っていました。
勝山南・奥越明成高校の「あれほどの 〜2012年」は、ミュージカルで、伝統を受け継ぐ覚悟ができ、部活の仲間達がだんだんとまとまってひとつになっていく様子が伝わってきました。劇の内容と部員達の現実が重なり、全員のこの劇にかける強い情熱を感じました。
最後に、じっくり考えさせられる劇がありました。
福井商業高校の「星をゆく舟(ただし一人乗り)」はペットボトルを通し、命のバトンリレーについて考えさせられました。原発のことにも触れられていて「被災したのがそんなに偉いんか」や「私の前で原発の話をするな」という台詞のぶつかり合いが心に深く突き刺さりました。
尾北高校の「SAKHALIN」では、目を背けたくなるような戦争の悲惨な状況が強い迫力とともに伝わってきました。ミツの「人が死ぬ価値がある戦いなのですか」という台詞や、智恵子の「生きる」という決意が、彼女たちが望んだ時代に生きる私たちの生き方について考えさせてくれました。
愛知高校の「合牢者」では、時代背景がわかりやすくよく考えて作られていて、音響・照明・舞台装置・役者の完成度がとても高い劇でした。登場人物を通し、自分たち人間の弱さを感じました。
刈谷高校の「Life is Judgement!!」では、選択カードによって人間がだんだんおかしくなっていく雰囲気がよく表現され、恐怖を感じました。私たちが進路などで選んでいる選択も実は周りに流されて自分の本当の選択ではないのかもしれないと感じました。
全体として、人と人とのつながりを感じさせられる劇が多かったと思います。あたたかいつながりもあれば、つながっているからこその苦悩もあるということが取り上げられていました。改めて自分とその周りの人とのつながりを考えさせられました。また、上演校の熱意がとても伝わる劇が多かったと思います。創作脚本では部員の長所を生かし、自分たちにしか伝えられないことを伝えようとしていました。また既成では、よく考えて潤色され、難しい脚本に挑戦していたのも印象的でした。
最後に、この中部大会を通して、たくさんのつながりが生まれたと思います。演劇が大好きな人がこんなにたくさん集まり、こうして大会が成功に終わったことを、そして私たちがこうして講評できることを幸せに感じる大会でした。来年も、再来年も、この中部大会を通して生まれたつながりを大切にしていきましょう!
以上で、全体講評を終わります。ありがとうございました。
《専門家・顧問審査員会》
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