福井県 福井農林高等学校


語られなかった物語のいくつか

というわけで、今年は登場人物に語ってもらおうかなと。
いやいや。手抜きとかそういうんじゃなくてね。いやほんとだって。ちょっと。石を投げないで。ダメ。あ。痛い。痛い痛い。

 

「アキラ」

実はすっごい奥手です。すんません。

特に男女関係については口で言うほどの積極性も度胸もなく、女性の前に立つと何も言えなくなってしまうんです。すんません。そんなだから恋愛をこじらせてしまうことも多くて、たとえば中学2年の時に好きになった彼女(同級生・テニス部)になんとか声をかけようと思いつつチャンスを逸して結果的に家まで尾行することになってしまい、あまつさえ家の前で2時間(12月で夜空に粉雪が舞っていた)彼女の部屋の明かりを見上げていたもんだから、ああ幸せだったなあ、おかげで家の人に通報され警察官にストーカーの嫌疑をかけられてしまったりなんかしちゃいました。まあ、ストーカーっちゃあ、ストーカーですけど。てへ。そのあとは交番→自宅→生徒指導部→校長室のお説教フルコースを喰らってしまって、いまとなっては青春の甘酸っぱくない思い出の1ページです。すんません。

 

「サトル」

実は僕は第7銀河方面帝国艦隊の司令長官だったんだ。

毎日午後11時から午前3時、旗艦メトロディアスの司令室に行く。宇宙海賊や植民星の反乱への対応が主な任務だ。用兵家としての僕の能力は他に冠絶しており、「ヤン・ウェンリーの再来」「ラインハルト・ローエングラムに負けているのは顔だけ」などと評されていた。副官の惑星ボンキュッボン出身の美女クラリッサ・ビジョルド(本名:吉田花子・北海道在住・スキーが苦手)、操縦士の身長2メーターを超す黒人ジム・マクファーソン(本名:加藤ひろゆき・香川県在住・うどん好き)を加えた3名は、帝国軍の至宝と呼ばれ、恐れられていたんだ。

とはいえ。クラリッサやジムはどうしてるんだろうなあ。やっぱ海の藻屑かなあ。

 

「母親」

最初はあんまりいい印象はなかったわね。あのとき、あの海岸であったことなんてぜんっぜん覚えてなかったし。あはは。だいたい見た感じもばっとしないじゃない、あの人。ブサイクっていうんじゃないけど、じゃあイケメンかっていうとそんなんじゃないし。中途半端。そう。中途半端な感じだったわね。こっちの言葉もしゃべれなかったし、まともな仕事にも就いてなかったし、だからお金も全然持ってなかったし。将来性もゼロだし。すごい音痴だったし。あれ。なんで私、あんなヤツと結婚したんだろ。あれ。あれれ。

 

「娘」

母さん最低。もういいからしゃべらないで。

その最低のお母さんと見た目ぱっとしないお父さんから生まれたのが私です。お父さんのことはあんまり覚えてません。早くに死んでしまったので。でもそれで寂しいとか不幸だとか思ったことはあんまりないです。私には私の人生があるし。私の人生が幸せかどうかは、お馬鹿なお母さんが決めるわけでもないし、中途半端なお父さんが決めるわけでもなくて、結局は私が決めるんだと思うし。

好きな人がいました。テコンドーやってて身長もそこそこあって笑うと歯が白く光るの。彼の方から付き合って欲しいって言われてうわやったあたしってすごいって思って即OKしてデートして家に呼んでいろいろ話もして。そしたらお父さんの話になったのね。あたしもお母さんもこんなだから全然気にしてなくて全部普通に話したんだけど彼にはショックだったみたい。明くる日学校に行ってみたらみんな知ってました。すごいぞIT技術。その日から即イジメが始まりました。すごいぞ同調圧力。彼氏とはそれっきり。友達ともそれっきり。でも学校に行かなくなったのはイジメがつらかったからじゃありません。ここははっきりゆっとかないと。つらかったからじゃなくて、アホらしくなったからです。あんなヤツラと同じ時間を過ごすのがものすごく無駄に思えたからです。あたしにはやりたいことがある。人をイジメたり差別したり排除したり、そんなことやってる暇はない。そんなことやって時間をつぶす人間とは付き合いたくない。

私の人生は私が決める。人に決められたくない。やっぱりそう思います。

 

福井農林高校の紹介

紹介ですか。そーだなー。じゃあ皆さんにこっそり教えましょう。

うちは農林高校で、だからバイオテクノロジーとか発酵とか、そういう施設もちゃんとあるんですけど、こないだそこでイチゴが突然変異を起こしました。このイチゴは、人間の精神を乗っ取って支配してしまうという恐ろしいイチゴでした。先日、先生と生徒が一丸となってこのイチゴどもに戦いを挑みました。後に「火の7日間」と呼ばれる凄絶な戦闘が行われ、ついに我々人間は見事に敗北、みんな支配されてしまいました。はい。

まあでも支配されちゃうと結構楽です。いちいち自分で考えなくてもいいのでイジメとかケンカとかしなくなったし。服装違反する奴なんか一人もいないし。いまではみんな毎日イチゴ畑に出て、穏やかな気持ちで水を撒いたり土を耕したりしてイチゴさまのお世話をしています。すごく平和。だってさ、自分の意志をで戦争したり差別したりするよりずっといいじゃん。ちなみにこうやってホームページ用の原稿を書いているのも僕の意志ではありません。イチゴさまがこう書けというとおりに書いているんです。だからつまらなくてもイチゴさまのせいですって、やっぱり言い訳じゃん。