第68回中部日本高等学校演劇大会
各校別講評文
講評文は、生徒講評委員会と専門家・顧問審査員会のそれぞれで話し合った内容をまとめたものですので、HPでは文章を書いた個人名は省略します。
北陸学院 | 名古屋市立 富田 |
奥越明成 | 中津商業 | 蒲郡東 | ||
南砺福野 | 春日井 | 岐阜総合 学園 |
大同大学 大同 |
高田 | ||
金城学院 | 暁 | 富山第一 |
刈谷東 | 岐阜農林 | ||
福井農林 | 野々市 明倫 |
審査員総評 |
○は創作
(愛知県)名古屋市立富田高校 上演2 《生徒講評委員会》
《専門家・顧問審査員会》
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(福井県)奥越明成高校 上演3 《生徒講評委員会》
《専門家・顧問審査員会》
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(岐阜県)中津商業高校 上演4 《生徒講評委員会》
《専門家・顧問審査員会》
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(愛知県)蒲郡東高校 上演5 《生徒講評委員会》
《専門家・顧問審査員会》
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(富山県)南砺福野高校 上演6 《生徒講評委員会》
《専門家・顧問審査員会》
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(愛知県)春日井高校 上演7 《生徒講評委員会》
《専門家・顧問審査員会》
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(岐阜県)岐阜総合学園高校 上演8 《生徒講評委員会》
《専門家・顧問審査員会》
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(愛知県)大同大学大同高校 上演9 《生徒講評委員会》
《専門家・顧問審査員会》
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(三重県)高田高校 上演10 《生徒講評委員会》
《専門家・顧問審査員会》
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(愛知県)金城学院高校 上演11 ○「kitsch」 江里ほの花 作 《生徒講評委員会》
《専門家・顧問審査員会》
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(三重県)暁高校 上演12 ○「オトコーラス」 暁高校演劇部 作 《生徒講評委員会》
《専門家・顧問審査員会》
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(富山県)富山第一高校 上演13 《生徒講評委員会》
《専門家・顧問審査員会》
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(愛知県)刈谷東高校 上演14 《生徒講評委員会》
《専門家・顧問審査員会》
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(岐阜県)岐阜農林高校 上演15 《生徒講評委員会》
《専門家・顧問審査員会》
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(福井県) 福井農林高校 上演16 《生徒講評委員会》
《専門家・顧問審査員会》
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(石川県)野々市明倫高校 上演17 《生徒講評委員会》
《専門家・顧問審査員会》
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審査員総評 |
≪佃 典彦先生≫ 前回の岐阜での中部大会に引き続き二回目の審査員となりました。 全大会にも出場した高校もあったりして何となく各高校の特色なども判ってきました。演劇において脚本は言わば船です。稽古始めで出航してから稽古中の様々な困難を乗り切って本番までの航海を沈没せずに無事に終わらせるだけの頑強な船でなければなりません。既成脚本とは言い方は良くないですが「借り物の船」です。大抵の場合、一度は航海が成功した船を借りて来ることが多いでしょう。そういった意味で僕は創作で勝負をして貰いたいと考えています。今回、十七校のうち創作脚本が8校で約半分です。これが他の地域と比べて多いのか少ないのか知りませんが、僕は三分の二くらいあっても良いと思います。 では各高校、上演順に講評させて頂きます。 @ 北陸学院高校 各校別にて講評済み A 富田高校 リチャード三世を元ネタにした創作脚本で僕はワクワクしながら観てました。僕自身、原作モノを基にして作品を書くことが多いのです。仕事で依頼される場合は大抵このパターン。 基本的には原作が悲劇の場合は喜劇に、喜劇の場合は悲劇に創りあげた方が効果的です。その点でこの作品は悲劇を使って悲劇を表現してまった点で少々勿体無いのです。逆にした方が原作の本質を捕まえやすい上、独自の世界観を反映させやすいからです。ただ、誰もリーちゃんをイジメてる訳じゃないのに自分が抱えたコンプレックスで辛さの深みに入ってしまう話の流れは凄く面白かったです。 B 奥越明成高校 この作品に僕は非常に心を動かされました。とにかくマイムだけで最後までやり切った事に敬意を表したいです。マイムをやりながらセリフを正確に言うのはかなり難しいです。相当に稽古したんだろうなと思いました。灯台の明かりのシーンは泣けました。ホリの色変化も上手くて世界とマッチしてました。ただ、セリフのトーンがずっと変わりなくて登場人物たちのニュアンスの変化がもう一つ感じ取れなかったのが残念です。 C 中津商業高校 緊張感のないゆる〜い立ち方、動き方、セリフの言い方、全てが楽屋から出て来てそのまま舞台に立っちゃった感じで始まった時は「おいおいどーなるんだコレ」って心配しながら観てました。が、途中からツボにはまってしまいました。演劇部の話で等身大なのでこのユルさ加減が適温に感じる様になったのです。とにかく加藤君と沼田君のコンビが良い。二人の普段の関係性がそのまま舞台を通して伝わって来ます。卒業してからもずっと二人で何かしら続けて行って貰いたいと願います。今、活躍している演劇人も部活で得た仲間と何十年一緒に続けて成功してるのです。 D 蒲郡東高校 台本はさすがに亀尾先生の作品で構造が上手いです。いかにして「借り物の船」を自分達で乗りこなすかがカギです。その点でかなり成功していたと思います。セリフのテンポと身体のスピードが合っていますし、いきなりホラーから始まるトップシーンからの導入も効果的でした。勿体無いのは登場人物たちの位置取りです。センターの机に集まって喋るシーンが多くて、登場人物たちの敵対や同調が今一つ感じられないのです。結果、俳優はセリフを必死に喋ってそれを補てんしようとしてしまう。感情過多になってしまいます。登場人物の「気持ち」を表現するのは距離と位置です。 E 南砺福野高校 この台本も既成脚本で過去に成功した「借り物の船」です。いかにして自分達で乗りこなすかがカギですが・・・充分に乗りこなせなかったなぁと言うのが正直なところです。もっと自分達にあった作品があるんじゃないか?その辺りの議論がもっと必要です。それか創作脚本で勝負するか。こう言ったディベート中心の芝居では誰が誰に何を伝えて誰の言葉が誰に響いたのか、それがハッキリしないと話が先に進みません。それには正面向きの芝居が多過ぎるのです。セリフを伝える相手は観客ではなく、舞台上の誰かでなければなりません。 F 春日井高校 女生徒たちがバカをやり切ることで「借り物の船」を見事に乗りこなしました。全員が個性的で非常に面白かったです。とくに桃子さんの爆発力には驚きました。先生役の男子生徒が弱々しいのも対照的で良かったです。どの世代の女性にも共感できる様に創られていると感じました。これだけ役者たちの力でグイグイ引っ張るなら教室の壁とか扉とか具体的に必要ないのではないか?机と椅子だけで十分だと思います。 G 岐阜総合学園高校 「あゆみ」は柴幸男さんの演出したモノを三回観てまして、どうだろうかと心配していましたがかなり見応えがありました。相当、練習したんだろうと思います。チームワーク、スタッフ力、総合的に素晴らしい。勿体無いのはこの作品にはどうしても床面が必要なのです。床面を踏みしめるところが視覚的に重要だと僕は思っていて、劇場に作品が今一つ合ってないのが残念でなりませんでした。仕方ないんですけど、作品を創る上で劇場との相性って実は結構重要だったりするのです。 H 大同大学大同高校 僕は今大会で一番笑わせて貰ったのがこの作品でした。もはや高校生に見えない登場人物、特にお爺さんには正直負けました。彼のキャラには勝てません。学生服を着ている姿が想像出来ません。つくづく役づくりとは内面から作るモノではなくて外面から作るモノだと再確認しました。ラストの自転車で走り、飛ぶ場面はもっと工夫出来たらと思います。少なくとも交番は隠してしまいたい。 I 高田高校 各校別にて講評済み。 J 金城学院高校 かなり少女マンガっぽい怖さを抱えた作品でした。バレエ、チョコレートと言った女子が好きなアイテムを使いながら心理的恐怖を炙り出すのは上手いと思います。ただ、演劇はモノローグで心情を吐露してはいけないのです。一見、演劇的な雰囲気はするのですが実は一番演劇と遠い手法だと僕は考えています。それを演劇的にするには圧倒的なスピードと独自のリズム感が必要です。僕としてはもっとバレエを踊って欲しかったです。 K 暁高校 エンターテインメントの台本の書き方の基本に則った上手い脚本です。人数がたくさん出て来るのに全員がしっかりと役割を演じて一人一人が立っています。部室の雰囲気も非常にリアリティを感じました。ただ派閥の人数が四人ずつでキッチリ分け過ぎてしまったのが惜しいです。派閥の対立構造がイーブンになってドキドキ感が薄れてしまうからです。舞台後ろの段の使い方が勿体無いです。もっと効果的に使わないと横一列の芝居が多くなってしまいます。元気があって少年漫画みたいで僕は好きでした。 L 富山第一高校 さすが前回、全国大会に出場しただけの完成度がある作品でした。特にトップシーンのキレの良さは抜群です。教室を椅子だけで表現しているのも成功しています。誰か一人、二人飛び抜けた役者がいるのではなく粒揃いでまとまっています。高校生の会話がリアルでジーンと来たのですが、僕には主人公の青山君の心の変化がもう一つ感じ取れませんでした。軸になるべきなのに語り部に終始してしまって傍観者になっているからです。もっと中に入ればドラマが弾んだのにと思います。 M 刈谷東高校 僕は今大会の中でこの作品がイチオシでした。相当に凄い身体能力だと脱帽しました。あのスローな動きでブレることなく一曲分丸々やり遂げるとは。しかも椎名林檎の歌声とバッチリ合って泣けてしまいました。あの圧倒的音量が必要なんだと思います。とにかくもう一度観たいと思ったのは今回この作品でした。機会があればまたどこかで観てみたい、と言うより体感したいです。 N 岐阜農林高校 昨年は野球で今回はバスケ、本当にスポ根ドラマが好きなんですね。話の展開もエンターテインメントの書き方に基づいていて非常に明解でヤマ場の作り方も上手いです。何よりも圧倒的な群像劇であるところが魅力的です。バスケットゴールの揺れるのに感動しました。あの仕掛けを担当している生徒に特別賞をあげたいくらいです。二年連続で僕は見ましたが少々、伝統に縛られている様にも感じました。次には全く違うジャンルの芝居も観て見たいです。 O 福井農林高校 何もないところに現れて「人間です」という始まり方は秀逸です。僕はこういうの大好きなのでワクワクしました。衣装もパジャマなのが良いです。世界は農業のように繰り返し繰り返し続いていくという宇宙観を感じました。転がっている死体に「起立」「礼」と言うシーンは非常に感動しました。もう少し役者たちが意識的に舞台上に立っているともっと良くなると思います。全体的にメリハリがなくなってしまった点が惜しいところです。柱の立て方は客席に平行にしないと見切れてしまいます。 P 野々市明倫高校 昭和十二年という等身大ではない役どころによく挑戦しました。恐らくセリフが馴染まなかったり厄介な言い回しが多かったことでしょう。僕にも経験がありますから難しさは判ります。が、敢えて言いますと男子の背筋が気になります。セリフを言う時の手が気になります。まずはピシッと立って真っすぐ歩くところから練習が必要です。転換があまりにも長過ぎます。細かい部分の積み重ねで芝居は出来上がるのでその点を注意すると良いと思います。 以上で総評とします。 自分達の観たい世界、体感したい世界を自分達の言葉で表現する。そういった作品創りを目指して頑張って下さい。期待しております。 |
≪岡田 保先生≫ 今回私の中で掲げた「高校演劇らしさ」とは「自分たちがお芝居を創るにあたりどれほど楽しめたか」であり、その点において強く評価を重ねてあることを先に記す。より楽しんで、より愛して創ったそのお芝居は細部まで非常に高いクオリティになる。学業に勤しむべきであろう皆様の貴重な時間・青春を費やして創ったその作品は、私の目から見てもとてもクオリティの高いものが多く、驚かされた。 スタッフ側の専門審査員として観た今回の中部大会の講評を以下に記す。講評を担当した2校は各校別講評にて記載させていただく。 北陸学院高等学校『私立まほろば高等学校落語研究同好会の輝ける歴史』葛谷が上手下手に動く様は動きがあり楽しいものだった。後方にある机と椅子を動かさずに舞台転換が出来ればより葛谷が引きたっただろう。富田高等学校『リーちゃんV世』中央の正方形を主な演技スペースとして使っており、広い会場の視線を効果的に集めていた。奥にある高見が暗い照明効果により見えにくくなっており、せっかく施した塗りが把握しづらかったのが残念である。奥越明成高等学校『ノー・ニュークス』セットが一切なく、全編パントマイムによる動作のみでヨットを表したのはすばらしい。8割の観客は舞台にヨットの船影を見たのではないか。残り2割の観客にも船影を見せるには何が出来るか、これは我々プロにとっても永遠の課題である。灯台の明かりを表現したピンサスは、あの会場にとても効果的に映えていた。中津商業高等学校『とりあえずやってみよっか』エチュードによって全編が進んでいく(ように見せる)お芝居。故に最初から用意されているBOXに違和感を感じてしまった。最初は何も共通点のない大道具や小道具を強引にエチュードに巻き込んでいく、という構図を観てみたかった。蒲郡東高等学校『ぽっくりさん』具象舞台で教室を作り上げている。クオリティも高く、窓から飛び降りてもパネルが揺れない・着地の音がしないなど細かいところまで気を使っていた。下手の出ハケ口が学校の扉を表しているのであれば明かり窓が無いことに違和感があった。南砺福野高等学校『七人の部長』7人の部長が会議しながら本編が進んでいく。会議室の机を開いて対立の構図を見せていたが、故に動きが少なくなっており、舞台美術で補う余地が見えた。如何に役者を動かすか。部屋の隅に役者が移動しやすい椅子や棚を置いたり、机を除外し椅子のみの動きで対立構造を際立たせるなどの方法もあるか。春日井高等学校『イ=ストーリー』具象で教室を作り上げていた。舞台を間口いっぱい使い切っていたが、登場人物が少ないので集中力が散漫になりやすく、セットの間口はもっと狭くても良かったように思う。大同大学大同高等学校『交番へ行こう』町の交番を造り上げており、完成度では群を抜いている。音響効果などで「公園の遊び声」や「車の行き交う音」など、どの程度の町の規模なのか伝えて欲しかった。高田高等学校『M』具象舞台で教室を造っていた。廊下での演技のために窓があるが、その奥の窓と差別化しきれていなかったため、視覚的に見づらくになっていた点が惜しい。金城学院高等学校『kitsch』バレエ教室をモチーフにした舞台美術。開演時、鏡の奥が開くと階段があり頂上には欲望の象徴であるチョコレートがある。ラストシーンで階段から突き落とすが、そのモチーフである中央の階段の意味合いが分かりにくくなっていた。モチーフを作るならば、それがより本編と絡む作りに挑戦して欲しい。暁高等学校『オトコーラス』音楽室を作り込んであり素晴らしい、説得力があった。せっかく舞台中央にひな壇があるのだからもっと座り込むなどの工夫で画に対して高低差をつける演技プランも見てみたい。富山第一高等学校『Re:大丈夫か?』セットと台本との相性はダントツで良かった。演出の意図を汲んでいる舞台美術である。どんなパーツを置けば教室に見えるか?を最小限のアイテムで創りあげている点を高く評価したい。刈谷東高等学校『手紙2015』全編を通して最小限のセットと地明かりのみで構成しておりシンプルながら高い次元でまとまっている。今回の小屋の特徴としてあまりに明るい床色のため、舞台すべてを地明かりで包むと観客の集中力は途切れやすい。明かりを少し舞台中央にしぼるか、作業灯などで上幕まで照らす方がより演出意図が伝わるのではないか。福井農林高等学校『クロニクル』時の流れを表す為の新聞紙パネルが、時のサイクルを表すために円形に置かれている。演出における舞台美術のアプローチは伝わってきたので、より深く、ところどころ新聞紙をセピア色にする等工夫が見たかった。野々市明倫高等学校『私の上に降る雪は』時代物に挑戦した点を高く評価する。セットの作りを工夫した転換を行っているので、ブルー転換などの「魅せる場転」で観客の集中力を維持できたであろう。 |
≪樋口 泰子先生≫ 今回初めて、参加をさせていただきました。高校演劇出身の私にとっては、自分の芝居の原点に立ち返ることもでき、とても刺激的で幸せな時間でした。ありがとうございました。 以下、総評とさせていただきます。奥越明成高校と暁高校は各校別講評をご参照下さい。 北陸学院高校『私立まほろば高等学校落語研究同好会の輝ける歴史』みんなで作り上げようとしている芝居の世界観が一致していたので良かったと思います。ラストの客席を巻き込んでの演出は、その思い切りの良さに驚きました。転換時の机やイスの扱い方や着物の着方など、細部も気にしてみてはいかがでしょう。 富田高校『リーちゃんV世』シェイクスピア作品を女子高生の悩みに置き換えた発想力が素晴らしいと思います。全体に照明が暗く、演者の表情が見えないのが残念でした。コロスメンバーの人数が多いので、それを武器にした演出があると更に良かったと思います。 中津商業高校『とりあえずやってみよっか』エチュード芝居を舞台にのせるという大胆さに興味を惹かれた作品でした。せっかくチャレンジをするのであれば、台本上の決め事とフリー演劇の差が全くわからないくらい堂々と楽しめたら、演者一人一人の魅力がもっと出たのではないでしょうか。 蒲郡東高校『ぽっくりさん』演者のアンサンブルがとても良かったと思いますが、スピード感が必要なシーンになった時にジャスチャーが多くなり、自分の状況や心情を説明しずぎてしまう点が気になりました過剰演技になりすぎないように気を付けてみて下さい。 南砺福野高校『七人の部長』せっかくいろいろな個性を持った役がたくさん出るのに、もったいないなと思いました。この芝居の面白さはどこなのか。役が何をきっかけにどう変化していくのか。そんなことをより深く考えてみたら、もっともっと舞台上で楽しめるかもしれません。 春日井高校『イ=ストーリー』女の子ばかりでこのはじけ感は見事でした。個々のキャラクターの住み分けもはっきりしていて様々な絡みを見せてくれ、目が離せませんでした。時々、観たい演者の表情が暗くて見えないのが残念でした。 岐阜総合学園高校『あゆみ』演者8人の息の合った動きやセリフに脱帽しました。欲を言えば、この作品を通して自分たちは何を伝えたいのか、岐阜総合さんなりの解釈を舞台上で見たかったです。 大同大学大同高校『交番へ行こう』本番中にハプニングがあったものの、集中を切らさずに観客を笑わせ、演じ切ったのが素晴らしかったです。家出少女の父親がどんな人物か、もっと想像できるとよいと思います。 高田高校『M』ラストのホラー性がとても衝撃的でした。セリフが、物理的な音としては聞こえるのに意味が分からない、ということが多くて残念でした。自分がしゃべることに一生懸命にならず、セリフを相手に渡すこと、言葉をきちんと届けることを意識すると良いと思います。 金城学院高校『kitsch』他人への妬み嫉みなど誰もが抱えているかもしれない心の闇と、華やかなイメージの「バレエ」や「チョコレート」。これらを一つの題材としてまとめたのは、女子高という環境だからこそ培われた視点があればこそだと思います。主人公が闇に取り込まれていく変化がもっと明確に出ると良いと思いました。 富山第一高校『Re;大丈夫か?』演者たちの肩の力が抜けていて、物語の中の一人としてナチュラルに存在しているのが素敵でした。カンニング事件が起こるまでのシーンをどう魅せていくか、もう一工夫あると更に観客の共感が得られたのではないでしょうか? 刈谷東高校『手紙2015』役者が舞台上で他人を演じる時、その演技やセリフに実感を持たせるためには現実の自分をさらけ出すことが大切だと、改めて思った作品でした。3人の演者に、拍手です。 岐阜農林高校『Is(あいす)』実習など農林高校さんならではの日常のリアルと、エンターテインメント性のバランスがとても良かったです。作品中に描かれた「バスケ部愛」がそのまま部員50人以上の「演劇部愛」なのではないかと感じた、とても熱い作品でした。 福井農林高校『クロニクル』扱っているテーマそのものは面白いのではないかと感じるのに、はっきりと読み取れなかったのが残念でした。シーン中、あるいはシーン毎に緩急をつけたり、照明で観客の集中を切らさないようにするなどの工夫を加えると、より伝わる作品になると思います。 野々市明倫高校『私の上に振る雪は』今大会唯一、実在の人物を題材にした内容だったので、興味深い作品でした。史実や時代性をどこまで表現するかなど、難しい点はいくつもありますが、着物の着方を研究したり、所作を工夫してみるなど、身近なことからアプローチすると、演じやすくなると思います。 |